神戸市北区で2017年7月、祖父母と近隣住民ら5人を殺傷したとして殺人などの罪に問われた無職の男性被告(32)を無罪とした大阪高裁判決について、大阪高検は11日、上告しなかったことを明らかにした。男性を心神喪失状態と認め、刑事責任能力を問えないとした判決が確定した。上告期限は10日だった。
大阪高検の小弓場文彦次席検事は「判決内容を十分に検討したが、適法な上告理由が見いだせなかった」とのコメントを出した。また、神戸地検は11日、心神喪失者等医療観察法に基づき適切な医療措置を求める手続きを神戸地裁に申し立て、同地裁は同日、鑑定入院命令を出したという。
今年9月の高裁判決は一審神戸地裁判決に続き、男性は精神疾患による妄想などの圧倒的な影響下にあった疑いがあり、自分たち以外を自我や感情がない存在の「哲学的ゾンビ」とする妄想を信じ、事件を起こしたとされた。
男性は17年7月16日早朝、北区の自宅や周辺で祖父母=ともに当時(83)=や近くに住む女性=同(79)=を包丁で突き刺すなどして殺害。母親(59)や別の女性(71)にも重傷を負わせたとして起訴された。
一、二審ともに刑事責任能力の有無が争点だった。刑法39条は、刑事責任能力を完全に欠く心神喪失者の行為は罰しないと定めている。
竹島叶実